画期的なECモールメタバース「Vircre」をPlayCanvasで実現!【後編】

アパレル業界に、PlayCanvasがもたらした大きな価値とは?【後編】

アパレル企業「アトリエギルドGOSOUTH」のメタバース参入のため、「Kinobo」がウクライナ企業とオフショア開発を進めたサービス「Vircre」。PlayCanvasの採用で、圧倒的短期間・低コストでの開発を実現しました。
事例紹介の後編である本記事では、「Vircre」の開発に関わった市川氏と堀木氏に、開発プロジェクトの詳細やPlayCanvasご利用のメリット、今後の展望について伺いました。

INTERVIEWEES

市川 大輔

市川 大輔

アトリエギルドGOSOUTH 代表
株式会社 Vircre 代表取締役社長

堀木 遼

堀木 遼

株式会社 Kinobo 代表取締役CEO
株式会社 Vircre 代表取締役CEO

画期的なECモールメタバース「Vircre」をPlayCanvasで実現!【前編】へ

それでは、「Vircre」開発プロジェクトについて教えてください。どのような協業/プロジェクト体制で開発を進めたのでしょうか?

堀木:KinoboにはPlayCanvasの使用経験やメタバース開発経験がなかったので、PlayCanvasで開発ができるようにJavaScriptエンジニアを募集する必要がありました。予算が限られているため、経験年数は浅く、若手で吸収の良いメンバーを採用しました。具体的には、3Dモデラ―とPlayCanvasをメインで触るエンジニアとして、現在は大学生2名が稼働しています。

彼らのスキルで対応が難しい部分は、ウクライナ企業のチームに依頼します。この他、全体管理や技術選定はKinoboのCTOが、UI設定やロードマップの計画は私が担当しています。プロジェクト全体では、常時活動しているメンバーが日本で6名、ウクライナで4名の合計10名です。

開発のほか、必要に応じて社内エンジニアをスポットでアサインしたり、クラウドファンディングで募集したテスターに依頼することもあります。また、バックオフィス業務やリアル店舗での販売ノウハウ共有は、アトリエギルドGOSOUTHの実店舗スタッフが担当しています。

PlayCanvasのチーム開発機能を利用して開発いただきました

複数の企業が一丸となってプロジェクトを推進されているのですね。
そういったプロジェクト体制でPlayCanvasをご利用いただき、良かったのはどんな点でしょうか?

堀木:まず、PlayCanvasはグローバルなサポート体制やコミュニティがあるので、技術面での不明点は海外チームから開発元に英語で質問しました。たとえば、ウクライナチームで疑問点があった場合には、彼らがPlayCanvas開発元のフォーラムに直接アクセスして解決しました。このように、PlayCanvasはオフショア開発に非常に適していると思います。

海外チームはフォーラムを活用して技術的な問題の解決を行いました

また、クラウドでの権限管理がしやすかった点も大きなメリットです。チームごとにどこまで触れるか切り分けができるので、世界中に複数の拠点がある「Vircre」プロジェクトでは特に運用しやすかったです。

さらに、容量追加へのスムーズな対応も助かりました。他社サービスでは容量追加のたびに課金されて大変だと思いますが、PlayCanvasではそういった心配がなく予算内に収めることができました。

反対に、PlayCanvasで気になったところや大変だった点はありますか?

市川:まず、ネット検索で情報があまり出てこない点です。自分はプログラミング経験が浅く、JavaScriptについて不明点が多くありました。比較になってしまいますが、他のゲームエンジンではネット上に膨大な情報があります。PlayCanvasの場合には、JavaScriptの情報を見つけても解決に直結しないケースが多いです。JavaScriptに精通しているからといってPlayCanvasでの開発に必ずしも役立つわけではなく、PlayCanvas独自の構文が存在している印象です。

また、チュートリアルやマニュアルの翻訳が追いついていない現状があります。最も参照したい部分が、英語のままというケースがあります。他に機能面では、ワンクリックでのフォーカスやインプットフィールドの表示などがほしいです。今後の機能拡充に期待しています。

日本ではPlayCanvasエンジニアの人口がまだ少なく、PlayCanvasの経験者をなかなか採用することができません。ただし、世界規模で見ればPlayCanvas経験者が多く存在しています。

「Vircre」の開発で海外企業と連携されたご経験について、苦労した点やスムーズに進んだ点を教えてください。

堀木:苦労した点は、プロジェクトの初期段階ではPlayCanvasの正しい知識をすばやく得られなかった点です。開発当初は弊社にPlayCanvasの利用経験がなかったため、開発知見のあったパートナー企業に頼ってしまいました。情報の正誤がわからずPlayCanvas運営事務局に不明点を確認したところ、すばやく的確な情報を得られスムーズに解決できました。

うまくいった点は、まず安価ですばやくWebGLを利用した実装が出来た点です。PlayCanvasを使用しなければ「Vircre」のリリースはあと2年遅れていたと思います。企画段階から1年以内で、しかもPlayCanvasでの開発経験がない状態からプレリリースにこぎつけたのは非常に嬉しい点でした。またコスト面でもPlayCanvasを使用しなければ、10倍以上になっていたと思います。

次に使用言語です。開発するための言語がJavaScriptだったので、エンジニアの募集が容易でした。

市川:PlayCanvasはグローバルなサービスだったので、海外連携がよりスムーズに進んだのではと思っています。世界中のどこにいてもブラウザで動くので海外との連携がしやすい、というメリットは大きかったです。

ウクライナ企業と連携したとのことですが、こちらの会社について教えてください。

堀木:Sensorama Labという企業で、AR/VR開発に特化しています。サービス内容では、原発や農場機具、医療シミュレーションなど、バーチャルでの職業トレーニングを提供しており、ヨーロッパ各地にクライアントを持つ企業です。

彼らには、日本で言うところの侍魂のようなマインドがあると感じています。本社がウクライナのキエフにあり、困難な状況下でもあきらめることなく、熱心に開発を続けてくれました。PlayCanvasの開発経験がないところからスタートしましたが、彼ら自身もPlayCanvasの知見を積極的に得てくれた点が非常にありがたかったです。

Sensorama Labのメンバー

PlayCanvasについて、ウクライナ企業の開発担当者からフィードバックがあれば教えてください。

堀木:以下のフィードバックをいただきました。

日本国外でのPlayCanvas普及度について、印象を教えてください。

Sensorama Lab担当者(以下、Sensoramaと記載):PlayCanvasを使用したプロジェクトは、極めて多岐にわたっています。ウクライナでは、アパートや住宅の3Dインテリアデザインに使用されています。

今回、PlayCanvasでの初めての開発とのことですが、実際に使用してみた印象や使用感を教えてください。

Sensorama:弊社は没入型技術をもとに、BtoB向けの効果的なソフトウェア・ソリューションを開発しています。チームメンバーにはVR/AR分野で高度な知識を有したUnity、Unreal Engine、ウェブの開発者がいます。

以前のウェブベースの3Dプロジェクトでは、WebVR向けのThree.js、またはWebAR向けの8th Wallのみを使用していました。「Vircre」プロジェクトに参入した際、日本チームはすでにバックエンドや、PlayCanvasを統合した3Dシーンおよびキャラクターの作成に着手しており、弊社はバックエンド作業のほかマルチプレイヤーやボイスチャット、UIの統合などの業務を委託されました。

PlayCanvasについて聞いたことはありましたが、パイプラインでの使用経験がなかった弊社は、PlayCanvasからThree.jsへの開発の切り替えを提案しました。また、PlayCanvasでは予定している機能すべては実装できないかもしれないと思ったので、PlayCanvasを習得する時間がほしいと日本チームに依頼しました。検討の結果、驚いたことにPlayCanvasは3Dをウェブアプリケーションに統合するうえで非常に便利なツールだと分かったのです。

PlayCanvasの機能のうち、特に以下が役立ちました:

  • 複数の開発チームが1つのプロジェクトで効率的に作業できるバージョン管理システム
  • テストおよび本番用にプロジェクトを迅速にパブリッシュする機能
  • ライティング、マテリアル、テクスチャの最適化
  • シーン管理
  • 何時間もの作業を軽減するデバッグ機能

PlayCanvasに習熟した弊社は、3Dウェブ開発用のシンプルかつ機能的なツールとしてPlayCanvasを業務で使用することにしました。たとえば、PlayCanvasエンジンでソーシャルプロジェクト「Brave Kids」を作成済みです。これはシェルター付きのバーチャルな学校で、ロシアによるウクライナへの大規模な侵攻後、最初の数週間に描かれた子供たちの絵が展示されています。

PlayCanvasを通じて、日本企業と協業してみた感想を教えてください。

Sensorama:日本はハイテク先進国として注目され続けているので、日本のプロジェクトに参加することはとても興味深かったです。時差や言語の違いにも関わらず、プロジェクト初期から生産的なコミュニケーションを容易におこなえたので、適切な解決策をすばやく見つけることができました。また、PlayCanvasのバージョン管理とチームワーク機能によって日本チームが何を追加したか確認でき、必要に応じてすぐに修正や改善をおこなえました。

「Vircre」プロジェクト全般の感想を聞かせてください。

Sensorama:「Vircre」は興味深いプロジェクトで、すべてが新しくモダンな点が特徴です。「Vircre」はメタバースでの3次元マーケットプレース・プラットフォームです。「Vircre」で販売される服は日本の非常にモダンなスタイルにもとづき、時代の最先端を表現しています。「Vircre」はバーチャルコマースやコミュニケーションに新たな風を送り込んでいます。今後、VR/ARバージョンを作成したり、改良をおこなう予定があれば、ぜひまた「Vircre」プロジェクトに参加したいです。

「Vircre」サービスでのPlayCanvasご利用について、今後の展望を教えていただけますか?

堀木:まず、アバター機能を拡充します。一般的なゲームにあるアバター機能、たとえば衣服やアイテム、称号、アバター同士のコミュニケーション機能を搭載していきます。これによってサービス内での滞留時間が長くなり、より魅力的な商品に出会えるチャンスを創出できると考えています。

次に、他社メタバースとの連携です。他社のアバターを「Vircre」内でスムーズに変換できるようにします。実現に向けて、ポリゴン数を調整するコンバーターの開発を計画中です。

また、「Vircre」内で遊べるエンターテインメントコンテンツをさらに拡充します。具体的には、ゲームやライブ配信、水族館などの実装を検討しています。さらに、NFTと連携することで「Vircre」内の土地売買や、雇用創出も考えています。たとえば、バーチャルショップ内でのみ稼働するアルバイトの採用などを進められると思います。

以上3点は技術的な検証は完了していますので、すべて3~5年以内には実装できる見込みです。

さらに、別プロジェクトで開発中のDeFi技術やNPCによるチャットボットを連携し、「Vircre」をパワーアップしていきます。既存のゲームに存在する機能をメタバースにも実装していくこと。これが「Vircre」の目指す姿です。

「Vircre」の公式Twitterアカウントで日々アップデート内容が確認できます

今後ますます機能強化していく「Vircre」が楽しみですね。
「Vircre」サービス以外にも、PlayCanvasご利用の展望がありましたら教えてください。

堀木:今後、ウェブサイトはよりリッチになっていくと考えます。企業サイトやECサイトでも、埋め込み型のコンテンツが増えていくはずです。そういったウェブサイトの開発にPlayCanvasを活用していきたいです。また、本格的なゲームの開発も検討しています。WebGLで動くゲームをPlayCanvasで開発する予定です。

市川:各企業の世界観を見られる空間として、PlayCanvasを使ってホームページを3D化したいですね。あとは、通販ショッピングが楽しかったよ、という世界観をさらに実現していきたいです。ショッピング以外でも、さまざまなコミュニティで使えるコミュニケーションツールの創出を目指しています。高齢者が孫にすぐに会える場所や、現実には外出が難しい、障がい者の方などへのショッピング促進などを考えています。PlayCanvasならば、そういったコミュニケーションツールを簡単に作っていけると思います。

PlayCanvasのサービス全般について、今後こうなってほしい、こうなったら良い等のご要望はありますか?

堀木:日本人でPlayCanvasエンジニアを、100万人くらい増やせたらと思います(笑)。将来エンジニアとして育ってもらうため、ブロックプログラミングなどを用いた教育プログラムで、中学生から高校・大学生まで若年層への普及を目指したいですね。

市川:PlayCanvasエンジニアの人口が増えればスタンダードになりますし、コミュニティでのコミュニケーションもさらに活発になります。勉強会をもっと積極的に開催するなど、ユーザー数拡大をしていってほしいです。

最後に、PlayCanvasを他の方におすすめしますか?また、その場合はどのような点が特におすすめでしょうか?

堀木:おすすめします。PlayCanvas人口が増えないと、弊社の発展もありませんので(笑)。他社でPlayCanvas制作のニーズがあった場合に、Kinoboで受託開発が可能な状態となるように社内での対応を整備していきます。

市川:エンジニアとしてのユーザー目線でも、非常に興味深いツールなのでおすすめです。ウェブさえあればすぐに作れる体験があって、SNSでのリンク共有で簡単に作品を公開できます。反応を確認できるので、作るモチベーションが上がりますね。簡単で直感的かつブラウザで動いてサービス利用できる、というのがPlayCanvasの大きなメリットです。正直、他社に知られるのが悔しい気持ちもあります(笑)。

本日は貴重なお話をお聞かせいただき、誠にありがとうございました。

<製品のご紹介>

ECモールメタバース「Vircre」サービス紹介サイト
https://lp.vircre.com/

ECモールメタバース「Vircre」
https://vircre.com/

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