PlayCanvasを採用し4タイトルのゲームアプリを開発したボトルキューブの次なる一手は?

スマートフォンを中心としたゲームの企画・開発・運営を行っているボトルキューブでは、いち早く『PlayCanvas』を採用しました。2015年9月の採用後、2016年5月にはヤフー株式会社が運営するHTML5ゲームプラットホーム「Yahoo!ゲーム かんたんゲームプラス」にて、PlayCanvasで開発を行ったゲームを4タイトルリリースしています。そこで今回は、PlayCanvasによるゲーム開発にエンジニアとして携わり現場を統括してきた小川氏と、デザイナーとして携わった角川氏に、PlayCanvas導入の経緯から今後の展望までをお伺いしました。

INTERVIEWEES

 角川 伸一

角川 伸一

株式会社ボトルキューブ
社長付

 小川 雅和

小川 雅和

株式会社ボトルキューブ
執行役員

PlayCanvasを採用するにいたった経緯を教えてください。

小川:2015年9月の時点で、WebGLで開発できるゲームエンジンは3~4つほど選択肢がありました。その中からPlayCanvasを選択した理由は、UI部分での使いやすさと、ゲーム開発のしやすさです。ゲーム開発でありがちなのは、エンジニアとデザイナーの共同作業において、どちらかの作業を待たないといけなくなることです。その点でPlayCanvasならデバイスを問わず、いつ、どこからでも複数人が同時にゲーム開発を進めていくことができます。待ち時間がなくなることで、ロスを減らしながらゲームを手早く作っていけるんですね。

角川:ゲーム開発においてデザイナーが負担に感じることは、追加プラグインの導入が必要になることです。しかもそのプラグインに起因して発生した問題を、デザイナーが自力で解決することができないというジレンマがあります。その点でいえば、PlayCanvasはブラウザ一つで完結し、プラグイン追加の必要がありません。そのため、問題が発生してもデザイナーの範疇で解決ができます。またPlayCanvasは、「いじった結果がどのように反映されるのか」ということが、いじっている段階で想像できるんです。他のWebGLゲームエンジンではこうはいきませんので、そこはPlayCanvasの良さだと思っています。

PlayCanvas Editor : Web上で動作するためダウンロードやインストールが不要

PlayCanvasで開発すれば、エンジニアとデザイナーが揃っていなくてもゲーム開発が進められるということですね。

角川:はい。エンジニアの手を借りなくても出力結果がすぐ確認できるというのには助かっていますし、速度感があって便利なツールなのではないでしょうか。

デザイナーとして露骨なことをいえば、画面レイアウトの座標の指定なんかはいちいち出したくないんですね(笑)。これまでは座標の指定をエンジニアに渡した後、データが反映された表示を待つ必要がありました。画面をみてから「なんか違うな」という箇所を調整する作業の二度手間、三度手間が発生していました。PlayCanvasのように「ここに置きましたので、見てください」で済むツールなら、デザイナーにとってはもっともロスがありません。デザイナーが作ったままの画面、作ったままのインターフェイスをそのまま渡せるというのは非常にありがたいですね。

エンジニアとデザイナーがうまく連携を取りながら作業をしやすいということでしょうか?

小川:その通りです。たとえば、エンジニア側でレイアウトを調整してもらいたい場合があります。

このときエンジニアが動かしたレイアウトをデザイナーにもエディタを開いて見てもらい、「それではレイアウトがおかしくなる」「ビジュアル的にここにレイアウトされないと困る」など相談をしながらお互いに位置を提案しあってレイアウトを詰めていくことがPlayCanvasなら素早くできます。調整後のものをすぐに両者で見られるのは便利なことだと思います。

PlayCanvasを使ってみて気になったところはありますか?

角川:ブラウザに依存しているので、当然ですがブラウザの限界は超えられないところでしょうか。たとえば、光源や物理演算が必要なオブジェクトを増やし過ぎたりすると、動作環境によっては動作が遅くなったり、動かなくなったりすることがありました。今はもう少し軽くする技術がPlayCanvasに搭載されていますが、PlayCanvas導入当初の段階では、その限界の見極めがまだできていなかったというのはありますね。

小川:PlayCanvasは、ゲームエンジン開発のトップクラスの人が気軽にユーザー交流の場まで降りてきてくるんですよ。フォーラムでの熱いやりとりもありますし、困りごとで問い合わせても翌日には何かしらのフィードバックをもらえます。このように開発側と直接やりとりできる点は大きなメリットで、一緒により良いツールへとブラッシュアップさせているという感覚があります。

PlayCanvas Discussion : ユーザー同士の交流が盛ん。エンジン開発者とも気軽にやり取りができる。

PlayCanvasで開発した4タイトルのゲームアプリは、ボトルキューブにとってどのような位置付けだったのでしょうか?

小川:4タイトルそれぞれに課題を設けて開発していきました。まず1本目の『とりぴょ~ん』は「PlayCanvasでどういうゲームが作れるのか」の確認でした。2本目の『脱毛指令ハナゲリオン』では、表現的な限界はどこまでいけるのか、という確認です。そして3本目となる『ジグザグペンギン』では、水面の表現を含めてもっと3Dゲームっぽいものを作っていこう、という課題をクリアできました。最後となる4本目の『マネーラッシュパズル』では、2D表現と3D表現のマッチングはどこまでできるのかという確認を行いました。このように、研究込みでPlayCanvasによるゲーム開発をしています。

角川:そこで感じたことは、3Dゲームエンジンの棲み分けです。Unreal EngineやUnityなどは、質も高い3D表現のゲーム開発に世界中の人が使っています。でもPlayCanvasが目指しているのはそこではありません。WebGLが動くブラウザだけで複数人が協業しながら開発ができ、ゲームとしてもすぐにリリースできるといったところが狙いのようです。その特性を生かして、その中でできることを考えていきたいですね。

1作目『とりぴょ~ん』
2作目『脱毛指令ハナゲリオン』
3作目『ジグザグペンギン』
4作目『マネーラッシュパズル』

PlayCanvasに対する今後の展望を教えてください。

角川:私が考えているのはVRです。最近ではスマートフォンとダンボール製ゴーグルだけでVRが体験できるアプリも増えています。しかし従来のものですと、アプリをダウンロードしなければ使えません。これと同じものをPlayCanvasで開発してブラウザで提供できるようにすれば、より手軽にVRを提供できるのではないでしょうか。

小川:PlayCanvasならミニマムで2人いればゲームができてしまいます。エンジニアがモデルデザインまでできれば1人でもゲーム制作が可能です。

デザインは既成を使いPlayCanvasですぐにでも試してみたいのが、昔のエレメカゲームの移植です。かつてゲームセンターに置いてあったモグラ叩きゲームのようなものを、昔のままの機械っぽい動きの感覚で作れたら面白いのではないかと考えています。エレメカゲームは、構造的に単純なわりにはゲームメカニクスがしっかりしています。出来上がったら「将来的にはプログラミング教材としても使えたら……」ということも考えています。

<アプリのご紹介>
『とりぴょ~ん』『脱毛指令ハナゲリオン』『ジグザグペンギン』『マネーラッシュパズル』の4タイトルは、PlayCanvasの研究を兼ねて作られたゲームです。

Yahoo!ゲーム かんたんゲームプラス」にて、絶賛公開中!

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